使い方の例(逆行列、転置行列)
逆行列の使い方(例)
行列の演算にわり算はない。ただ、逆行列 A-1 を使った演算が、それに近い使い方となる。
例えばあるベクトルx が行列 A の変換により y になったとする。
x と y の関係式は
y = Ax
逆に y から x を求めるには、逆行列 A-1 を両辺の左から掛け、⑥式を適用する。
(四則演算のわり算で逆数をかけるのに近い)
つまり、
A-1 y = A-1 ・A x = x
よって
x = A-1 y
(方程式の解を求める時にも、よく見るかと)
ただ行列の積の性格(A・B≠B・A)上、逆行列を掛ける”順序”は、左右両辺同じ方向から掛けなければならない。
力学で使うのはほとんどの場合 3×3 行列までであるが、この行列の逆行列の成分計算は少し複雑になるため、計算間違い防止の意味も含め、ほとんどの場合ソフトに計算させる場合が多い。
ただ手計算が必要であっても、座標軸変換等での行列は正規直行行列での行列利用になるため、まじめに計算せずに、次章の転置行列から逆行列を求める場合が多い。
-> 逆行列&行列式のこれ以上の詳細は別記事(予定)で。。
転置行列の使い方(例)
転置行列が道具として使いやすいのは、特にその行列が正規直行行列の場合。
逆行列計算が簡単になる。行列をひっくり返すだけ(ベクトル回転させる時によく使う)。
正規直行行列の⑧の性質を使っている。
- 直行行列Aは、転置行列と逆行列が等しい
: A-1 = Atr ・・・⑧
一つの直行行列の場合には、大したメリットは感じないが、複数の正規直行行列を変換するような場合(行列の積)に有用なのである。
正規直行行列同士の積は正規直行行列である事(⑪式)も使って、その複雑な成分計算結果を、ただひっくり返すだけで逆行列にする事ができる。
楽である。
例えば、あるベクトルx が
θ(rad)回転
-> 続いてφ(rad)回転
した場合の回転行列、Rφ・Rθで考えてみる。
(Rθ Rφは共に正規直行行列、よってRφ・Rθ も 正規直行行列)
二つの回転後のベクトルを y とすると、
x を y に変換するには、
y = Rφ Rθx ・・・⑬
となるが、逆に y から x を求めるとなると、Rφ、Rθ の必要になる。
が、まじめに計算する必要はない。
Rφ ・Rθ の成分計算後であれば、必要となる逆行列に転置行列を代入して
x = (RφRθ)-1 y より
= ( RφRθ )tr y ・・・⑭
<- 計算したRφRθ の成分の行と列をひっくり返すだけ
Rφ、Rθ を個別に処理するのであれば、
(Rφ)-1 、 (Rθ )-1 の逆行列を順にかけ
x = (Rθ )-1 (Rφ)-1 y より
= (Rθ )tr (Rφ)tr y ・・・⑮
<- RφRθ 個別に行と列をひっくり返して、その後成分計算
当たり前ではあるが、(⑦式より)⑭式と⑮式は等しい。
複数の行列の積を手計算で求めた後に、その逆行列成分を求める。。。となると気が遠くなるが、正規直行行列であれば心配無用。
転置行列が逆行列となる
(行と列をひっくり返せばよいだけ)。
追記
さて、続いてはこの行列自体の和、差、積について(割り算はないが、逆行列による積が似た感じの使い方になる)。