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ねじ 1)-4. ねじ部のかかり代(勘合長)の設定と破損について

ボルト(ねじ)の力学

その他補足

ちょっとした設計配慮

ねじの諸元をベースにした豆知識と設計配慮について

さて、当然ではあるが、同一締結箇所のおねじとめねじと勘合長は同じであれば、

”母材同士の強度が同一であれば、めねじ側より先に ”おねじ側のねじ山抜けが発生” する”

ようになっている。(もちろん、おねじの軸破断が先に発生しない前提)

これは、勘合長が同じであれば、めねじ側のせん断円はおねじより大きい事(d>D1)から、必然的にめねじ側のねじ山のせん断面積が大きくなるので、式を見なくても当たり前といえば当たり前

とはいうものの、①式と②式までずずーっと戻り、式で確認をすれば、

\(
\begin{align}
\tt F_{mN}&=\tt \displaystyle \frac{7\pi}{8}\cdot L_m\cdot d \cdot \tau_{BN} ・・・① \\[8pt]
\tt F_{mB}&=\tt \displaystyle \frac{3\pi}{4} \cdot L_m\cdot D_1 \cdot \tau_{BB}・・・②
\end{align}
\)

おねじ/めねじが同一強度 \((\tau_{BB}=\tau_{BN}) とすれば、\tt \displaystyle \frac{7\pi}{8}>\tt \frac{3\pi}{4} \) かつ \( \tt d >D_1 \) より、明らかに

\( \tt F_{mN}\ >\ \tt F_{mB} \)

である。

じゃぁ、どれぐらいの差?は以下(呼び径違いで算出)

つまり、めねじのねじ山強度に対し、おねじのねじ山強度は大体2~3割減。差はこの程度。

という事は、、、逆にいえば、、、

おねじ側のせん断強さが強い場合(めねじ材に対し3割以上強ければ)、今度は ”めねじ側のねじ山抜け”が先に発生しはじめる。
(というか、材料強度差が大きい材料同士の締結は結構当たり前なので、結構おこる(アルミ鋳造部品へ高張力ボルトを使用した締結等々は最たる例かと)。)

これを避けたければ、勘合長を十分とり”ボルトの軸破断を先に起こす” 事を検討しておくのは、気の利いた設計配慮の一つとなる。

というのも、(作業不良等の)過大トルクで破損した場合、おねじ一本だけ壊れてくれた方が、コストも安い&交換も容易(作業復帰も早くなる)ため、ちょっとだけユーザーフレンドリー。

(上の計算例でいえば、No4->No5。もちろん、勘合長を十分にとっても、母材の組合せによっては、めねじが抜ける設定にしかできない場合もある(No5の例でも微妙))。

まぁ、設計上の制限を優先する場合もあるので、壊れ方の話をどこまで配慮するかは状況次第。
あくまでも過大トルク入力(= 作業不良)時の壊れざまの話であり、検討はしても結果はマストではない(かと)。

補足:材料の機械的性質

ネットで簡単に検索できるが、引張強さ&耐力のざっくりイメージ用に一覧で。

(正確な強度は使用する材料に応じてSpec確認要)

-> 自分はめねじの低強度材のイメージが200MPa程度以下ぐらいなので、念のために勘合長&締付けトルク設定とかちょっと気にするかな。。それ以上はねじ径分勘合長がとってあれば、何とかなるだろう的な。。。

注:ねじ山に作用する力

さてねじ山の破損時の荷重について今回はトルク法の最大発生軸力FsHを使ったが、参考書ではねじ山の破損時の荷重は以下で算出してある。
(参考書の計算では、最大軸力以上の荷重がねじ山にかかる計算になるので”あれ?”と思い、とりあえず計算には組み込まず。。)

まずは参考書そのままに。以下の図①の軸力 F からスタートして、力のつり合いから⑤をねじ山に作用する力 F’ として求める。(リード角0の近似とされている。)

つまり、\( \tt F’=\displaystyle \frac{\cos(\alpha-\rho)}{\cos\alpha \cdot \cos\rho} F\)

上で使ったFsHをこのF’で置き換えればよい。より安全側になるので、参考書ベースであればFsHの代わりにこちらを。。

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