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コミュ-2)-3. 説得のしくみ:説得されるまでの要因と過程について

2) 人が意思決定する仕組み

承諾誘導(説得に対する応諾)

状況の拘束力

「状況の拘束力」とは、人間の行動は自由意志のみによるものだけでなく、他者や社会から明らかな、あるいは気付きにくい形で、ある方向へと行動を導こうとするなんらかの別の要求がある。

これを「状況の拘束力」と呼び、社会心理学では個人の行動に常に作用していると考える。

具体的には、常識 / パラダイム等々、当たり前の事として、”無意識”に処理をさせる力の事。

例えば報道をみても、いじめ事件、殺人事件などの原因解析を、前述の“基本的錯誤帰属”から人の影響を過大評価、続いて(これも前述の)“弁別性”によりその人物の性格や動機、特異な経歴などの素質的な要因に帰着し報道される傾向にあるが、この「状況の拘束力」を見なくては、片手落ちとなるとされている。

常識として処理するため、その社会(コミュニティー)の中にいる限り、確かに要因として気付かないかも。

その 社会(コミュニティー)から離れて初めて、あれってなんか変だった?と気づく事は確かにある。

ヒューリスティック(発見法)を使った承諾誘導

Cialdini,R.,(1988)によると、状況の力によって個人の行動を誘導するための中心点は、”行動の連鎖”にあるという。

つまり人間を含め、多くの動物の行動には、ある引き金となる状況が与えられると、”固定的で自動的な行動”で反応するとされる。

つまり我々の意思決定の「装置」は特定の状況を理解すると、それに応じた特定のトップダウン情報を固定的&自動的に用いようとする傾向がみられる。

つまり人は特定の状況において、まるで機械のように自動的な反応を引き起こす。

これを ヒューリスティック (heuristic:発見法)とよび、人の情報処理の特徴の一つである。

人間は問題の解決、何かを考えて物事の判断をする時にこれも使用する。

これは例えるなら、迷路パズルを解くときに、人は全てのルートを消し込んでいくのではなく、通り抜けられそうなルートを選んでみてはトライする。

この様な方法は必ずしも成功するとは限らないが、うまく行けば楽に早く出来るかもしれない。
また、実際にうまくいく場合が多い。

ある意味、問題解決の発見の一つであり、全てを検討せずに結論を出す心理的簡便方法である。

ちなみに、これに対するのがアルゴリズム」(論理)である。これは理詰めで結論を導き出す。

この差異の例をあげるのであれば、実際には自動車事故の方が死亡確率が高いのに、センセーショナルなニュースとして飛行機事故は報道されるため、人は飛行機事故に巻き込まれるのを恐れる。

これは意思決定が、アルゴリズムではなく、ヒューリスティックで処理されているためである。

承諾誘導のため、話し手はこれを利用する。

つまり、人が自動反応する状況下で簡便法的な効率性と経済性を重んじる方向で情報を処理する「ヒューリスティック」を利用させるように仕向けるのが手法の一つとなる。

別の言い方をすると、人の心理を利用し意思決定に「アルゴリズム」を使わせない方が説得しやすいのである。

まぁ、そもそもほとんどの人が普段の生活においては「ヒューリスティック」を利用しており、行動を決めるときにいちいち深く考えている人はそうはいない。

(というか、そもそも「アルゴリズム」的な考え方をしない人もいるし。。。)

ヒューリスティックを引き出す条件

さて、この自動反応「ヒューリスティック」を引き出すのは、以下の5つの条件(状況)にまとめられるとのこと。

  • 返報性
  • コミットメントと一貫性
  • 好意性
  • 希少性
  • 権威性
返報性

いわゆる「ギブ&テイク」、「社会的交換(Social Exchange)」。

人は「お金」、「品物」、「愛情」、「奉仕」、「情報」、「名誉」という六つの資源に価値を置き、与えられた資源に対しは等価になるよう交換可能な資源を与えるという。

自分が相手に支払ったコストと、相手から得られた報酬との間でうまくバランスが取れていないとき、不快な感情となる。

逆の場合は罪悪感を覚える。人はこの罪悪感から逃れようと、人は自動的に相手の要請に応えるという返報的な行動に出やすい。

セールスの世界では「door in the face」の技術がこれを利用している。

つまり、最初に受け入れがたい大きな要請を要求し、相手に一旦拒否させる。その後要請者は譲歩して、目的の要求を出すというもの。

「相手を譲歩させた」という認知が相手に「何かしらのお返しをしなければ」という気持ちを生じさせることにより、相手方の譲歩を引き出す。

コミットメントと一貫性

コミットメントさせることが、この一貫性の自動的行動を引き出すキー。

セールスの世界では「Low ball」「Foot in the door」の技術がこれを利用している。

つまり、最初は誰でも承諾しそうな要求を出しそれを承諾させる。その後、新しい要求を加えていく。加えていく毎に、その都度要求を承諾させながら、最終的に計画通りの要求をし、承諾に持ち込む技術。

人は自己に誠実であろうとする、また人に悪い印象を与えたくない心理が働き、一貫した行動を取ろうとする。結果、強引な強制を感じることなく要請者の本来の要求に引き寄せられていく。

好意性

個人は好意を示してくれる相手に対して好意的な行動を示してしまうものらしい。

好意や愛情というのは人間にとって心理的に快い感情をもたらすことから、ある意味、返報性の一つである。

また、相手からの好感度を高めるには、

  • 相手との意見や嗜好の類似性が高い事
  • 近接性(接触頻度)の多い事
  • 好意の相互性(相手から好意を示されること(褒められる、お世辞を言われる))

が要素としてあげられる。

希少性

ある対象に対し、自由に選択の余地がない状況になると、自由度の広い状況のときよりも、魅力が高くなるという。

セールスの世界では「限定販売」「先着何名様まで」「品薄」といったように数を限ったりする。

この心理状態は“心理的リアクタンス理論(psychological reactance theory)”にて説明できるそうである。

権威性

人は権威者がいる時、その人に行動の責任を預けて、命令に自動的に服従しやすくなる。これは、映画にもなったMilgram,S (1965)の「アイヒマン実験」が有名。

まぁ、怪しい団体含め、有名人なり権威者の名前を全面に出して広告は行われる。メッセージの発信者として有効な事もあるが、たとえその人に関連がなくとも(事実を並べるよりは)人は耳を傾けやすく、また無条件に受け入れられやすい事を知っているからである。つまり、ヒューリスティック狙い。その有効性については日常でよく目にするので理解しやすい。

続けて

引き続き、意思決定構造のゆらぎについて。
意思決定構造 (ビリーフシステム)自体が人の心理、人としての性質から揺れ動く事も知っておいて損はないかと。

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