慣性-1)-1. 慣性力:ニュートンの”運動の三法則”の見方とその意味。物体の慣性について理解は、この三つが開始点。

1) 基礎:ニュートンの三法則

はじめに

力学の入り口の ニュートン(1642-1727)の運動の三法則 。

第二法則の “ma=F” が有名すぎて独り歩きしている感があるが、この三法則には共通項がある。

”物体の慣性” である。
逆にこの三法則が揃わないと、 ”物体の慣性”として語られている事象のとらえ方にずれがでる。

遠心力が実際に発生をしていない”見せかけの力”と言われて、見せかけじゃなくて力発生しているじゃん!と誤解されるのは、ここかと。

三法則をばらばらで理解するのは、ちょっと遠回り。”慣性”を基軸に再整理。

Note:ベクトル表記(太字+矢印)について。
例えば、運動量Pのベクトル表記は P、大きさは|P|。
概念をつかむだけあれば、PをPとして読んでOK

(とりあえずベクトル表示は無視をしておいて大丈夫。)

スポンサーリンク

まずは ニュートンの運動の第一法則から

運動の第一法則(慣性の法則)

ニュートンの運動の第一法則

外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体はそのまま動き続ける
”an object at rest will stay at rest, and an object in motion will stay in motion unless acted on by a net external force.”

Newton’s laws of motion – Wikipedia

第一法則の、運動している物体はそのまま動き続ける(等速直線運動を続ける)の意味は、

  • その時点の動き(速度&方向)を、そのまま維持しようとする性質
    (物体は”慣性”をもっている)
  • 物体に外部から力が作用する時のみ、その慣性が変わる

である。

(このニュートンの運動一法則が成立している座標系は、 慣性系(ガリレオ系)と呼ばれる。)

運動の第二法則(運動量と力)

まず、物体の ”慣性の大きさ” について。

慣性の大きさは運動量で表され、その慣性の大きさは ”質量x速度”

ベクトル表示を使って、運動量を \( \displaystyle \vec{\tt{P}} \)、質量をm、速度 \( \displaystyle \vec{\tt{v}}\)とすれば、

\( \displaystyle \vec{\tt{P}} = m \cdot \vec{\tt{v}}\) ・・・①

さて、

ニュートンの運動の第二法則

時間の経過に伴う物体の運動量の変化率は、物体に作用する力に直接比例し、その変化率は作用させた力と同じ方向に発生する
 ”the rate of change of momentum of a body over time is directly proportional to the force applied, and occurs in the same direction as the applied force.”

Newton’s laws of motion – Wikipedia

作用する力を \( \displaystyle \vec{\tt{F}}\) とすれば、運動量 \( \displaystyle \vec{\tt{P}}\) の変化率は作用する力\( \displaystyle \vec{\tt{F}}\) に比例し、その向きは \( \displaystyle \vec{\tt{F}}\) と同じとしている。

つまり第二法則は\( \displaystyle \vec{\tt{P}}\)の微小時間の変化率として \( \displaystyle\frac{ {\tt{d}}\vec{\tt{P}} } {\tt{dt}} \) を使い、ベクトルで表せば(要は微分)

$$ \displaystyle\frac{{\tt{d}}\vec{\tt{P}} }{\tt{dt}} = ~ \displaystyle \vec{\tt{F}}   ・・・②$$

と同義。

力: \( \tt m\cdot\displaystyle \vec{\tt{a}}~=~\vec{\tt {F}} \)

②式の左辺に①式の \( \displaystyle \vec{\tt{P}} = \tt{m}\cdot\vec{\tt{v}} \) を代入して

$$
\begin{align}
\frac{{\tt{d}}\vec{\tt{P}} } {\tt{dt}} ~ &= ~ \frac{{\tt{d(m}}\cdot \vec{\tt{v}}) } {\tt{dt}} \\[8pt]
&= ~ \tt{m}\cdot\frac{{\tt{d}}\vec{\tt{v}}} {\tt{dt}} ~ = ~ \vec{\tt{F}} ・・・③
\end{align}
$$

ここで \( \displaystyle \frac{{\tt{d}}\vec{\tt{v}}} {\tt{dt}} \) は、式の通り速度の時間当たりの変化。

つまり、加速度。

これを \( \displaystyle \vec{\tt{a}}\) すれば( \( \displaystyle \vec{\tt{a}} = \displaystyle \frac{{\tt{d}}\vec{\tt{v}}} {\tt{dt}} \) )、③式は

\( \tt m\cdot \vec{\tt{a}}~=~\vec{\tt{F}} \) ・・・④ <- 有名な式

力積 : \( \tt m\cdot\vec{\tt{v_1}} – \tt m\cdot\vec{\tt{v_0}} ~=~\vec{\tt{F}}\cdott \)

さてちょっと戻って、同じ②式 \( \displaystyle\frac{{\tt{d}}\vec{\tt{P}} }{\tt{dt}} = ~ \displaystyle \vec{\tt{F}} \) を別変形

\( \tt d~\vec{\tt{P}}~=~\vec{\tt{F}} \cdot{\tt{dt}}~ \) ・・・⑤

⑤式の微小時間 dt を一定時間に切り替える。物体にΔt秒間 \(\vec{\tt{F}} \) をかけたとする。

Δt秒間の運動量の変化Δ\( \vec{\tt{P}}\) は⑤式から、Δ\( \vec{\tt{P}} = \vec{\tt{F}} \cdot \tt{Δt} \) ・・・⑥

また、この時 \(\vec{\tt{v_0}} \) から \(\vec{\tt{v_1}} \) に速度が変化したとすれば、①式から運動量は \(\tt m\vec{\tt{v_0}} \) から\(\tt m\vec{\tt{v_1}} \)に変化する。

つまり、運動量の変化は、Δ \(\vec{\tt{P}} =\tt m\cdot\vec{\tt{v_1}} – \tt m\cdot\vec{\tt{v_0}} \) ・・・⑦ とも書ける。

よって、⑥⑦式から、

\( m\cdot\vec{\tt{v_1}} – m\cdot\vec{\tt{v_0}} ~=~\vec{\tt{F}}\cdot\ttt~ \) ・・・⑧

つまり、⑧式は、運動量の変化量は“(作用させた力) x (作用させた時間) “と等しい 事を示している。

この \( \vec{\tt{F}}\cdott \) は”力積”と呼ばれる。

第二法則まとめ

まとめれば

運動量の変化と力との関係式 : \( m\cdot\vec{\tt{a}}~=~\vec{\tt{F}} \)・・・④

運動量の変化と力積との関係式 : \( m\cdot\vec{\tt{v_1}} – m\cdot\vec{\tt{v_0}} ~=~\vec{\tt{F}}\cdot t~ \) ・・・⑧

④&⑥式ともに 第二法則を式にした \( \displaystyle\frac{{\tt{d}}\vec{\tt{P}} }{\tt{dt}} = ~ \displaystyle \vec{\tt{F}} \)・・・② から導かれる(根っこは同じ)。

(微分関係にあるから当り前なんだけど、、、意外と慣性ってどういうモノだっけ?って時に、んっ?となる事も多し。。。)

スポンサーリンク

運動の第三法則(作用・反作用の法則)

運動の第三法則

二つの物体間に作用するすべての力は、等しい大きさ、かつ反対方向の向きにて存在する
”all forces between two objects exist in equal magnitude and opposite direction”

Newton’s laws of motion – Wikipedia

さてこれは、”二つの物体” というのが注意点。一つの物体に対する力のつり合いのみではない(後述)。

例えていうなら、二つのボールが衝突する時(作用しあう時)、お互いに ”反対向きの同じ力” が作用する事を意味している。

第三法則で展開された先にあるのは、運動量の保存

さて、再度二つのボールの衝突を考える。

衝突の時間 t は、お互い当然同じ。加えて作用する力も大きさ同じで、向きが反対。つまり、

衝突による運動量の変化量は、双方共に |F|・t である
(運動量が変化する大きさは、双方の物体とも同じ)

ことを述べている。

つまり、衝突後、片方の物体の運動量が増加した場合、もう片方の物体から同じ量の運動量が減少する。これは、

衝突において物体間で運動量のやりとり(物体同士で運動量の増加と減少)がされているが、衝突前と衝突後の運動量の総量は変わらない、

ことを言っている。

これが”運動量の保存”の法則へとつながる。また、これも慣性の特徴のひとつ。

補足

さて、あと前述の”一つの物体に対する力のつり合いのみではない点” について

例えていうならボールが机の上にのっている時に、”ボールにかかる重力”と”机がボールを押す力”のつり合いが一つの物体に対する力のつり合い、これに加え、二つの物体が作用しあう時にも、第三法則が使える。つまり、物体間の運動量のやりとりを説明する法則でもあるという事を頭の片隅に入れておく。

まとめ

ニュートンの運動の三法則は、”力”に視点が行きがちではあるが、最初に手に取るのは”運動量”にしておいた方がよいかと。

  • 慣性(運動量)が主眼の三法則

という視点に持っておくのがおススメ。理解がずっと楽になる。

つまり、物体に力がかかっていない時、かかった時、他とぶつかった時の変化を、一つの切り口 ”慣性(運動量)”を使って、三法則に分けて説明いるだけ。。。

ゴルフで飛距離を伸ばしたい、サッカーでシュートの速度を上げたい、野球で投球速度を上げたいといった場合は、スイングスピードを上げるのも手であるが、力積の観点でいえば、力を加える時間を延ばすのも手、というのもこれからわかるかと。。打った後のフォロースルーが大切、なんていうのもここが一因。より威力のある(運動量の大きい)ボールが打てる。
ひと昔前のロベルトカルロスというブラジル代表選手。見たこともないような速度でフリーキックを放つのだが、小柄の彼がシュートを放つときのフォームがまさに力積の最大化。ボールに加える力だけでなく、ボールに力を加える時間を長く取るフォームをとっている。小柄な彼が最速のシュートを放つ姿は、なかなか爽快。

タイトルとURLをコピーしました