オイラーの公式 : Euler’s Fomula
世界で最も美しいといわれる式
この式は、オイラーの公式
から導かれる(②式の \(\theta \) に \( \pi \) を代入すると①式)。
振動系の解析では、方程式の一般解としてこの形が出てくるで、中身は知らなくてもこの形は覚えておいたよいかな。
理論物理学者のファインマン博士は、この式を ”宝石” と呼んだ。
今回は美しいと言われている理由 と その使い方を少し。”美しい公式だね” だけでは、ちょっともったいないしね
美しいと言われる理由について
①式&②式の登場人物は(使用されている数学の要素は)、
- ネイピア数 ” e “
- 虚数 ” i “
- 円周率 ” π “
- 負の世界 ” – “
- 指数関数
- 三角関数

着目するのは、この式の成り立ちである。
この式の登場人物(各要素)は数学の歴史上、それぞれ別の時代 / 別の地域 / 別の定義のモノ。
つまり各々別の必要性(動機)があり、定義されてきたものであるという事。
周期関数である三角関数、非周期関数である指数関数、実数と虚数からなる複素数、マイナスの世界、何度微分しても形を変えない指数関数exの底となるネイピア数e、円周率πと、一見すると全く別物なのである。
この各世界を、ひとつの世界に集約(統合)するのが②式のオイラーの公式。
この統合が成り立つ事(つじつまがすっきりと合う事)は、統合した世界においてのみならず、それまでの各世界での論理構築が”真”であった事の裏づけにもなっているのである。
-> ”世界で最も美しい公式”と呼ばれる理由である。
300年もの前(Leonhard Euler (1707 – 1783))の話である。
オイラー先生曰く
しかし、”ずっと前に分かっていたのである”って、カッコいい。すでに存在をしていて、見つけられるべくして、見つけたモノ。
数学は神様と会話ができる言語っていう人がいるのもわからないでもない。。
図形的に解釈
さて、実を言うとオイラーの公式は図で書くと、その解釈はそれ程難しくはない。
②式の右辺 (\( cos θ + i \cdot sin θ \)) に着目すれば、これは、複素数表示 \( \small{Z} = \small{Re} + i\cdot \small{Im} \) ( \( \small{Re} \):実数部、\( \small{Im} \):虚数部) を使った、複素平面(ガウス平面)の半径1の円(変数 \( θ \)) である事は明らか。← これが\( e^{i θ} \) の中身

\( \small{Z}= e^{i θ} = cos θ + i \cdot sin θ \)
つまり単に、複素平面上にて\( e^{i θ} \) は単位円を示している、と言っているにすぎない。
これが \( e^{i θ}=cos θ + i \cdot sin θ \) の図形的な解釈。
( 指数関数である \( e^{i θ} \) は複素平面でみれば、単位1の円をぐるぐるとまわっているのである <- 実数軸への投影した点の動きをイメージすると、サインカーブ等で見られる波型の動きをする。三角関数で置き換えられるイメージはココでわかるかと)
ちなみに、\( e^{i θ} \) が描く円において、\( (θ =\pi) \) の時が”最も美しい式”と言われる ①式 を表す点。
- \( e^{i \pi} = – 1 \) \( (θ =\pi) \)
当たり前だが、ちゃんと実数軸上の点になっている。
さて、\( e^{i θ} \) が \( cos θ + i \cdot sin θ \) と等しくなる事の証明もなかなか面白い。むずかしいパズルが解けた時のようなすっきり感が味わえる(オイラー先生、スゴし)。
以下の記事にて
さてさて、このオイラーの公式、美しい公式だね、、、から、ちょっとだけ先へ。使われ方ちょっと知っておくと、視野が広がっていく。なにせ、世界統合する数式。いろいろなトコロでちょこちょこ顔を出す。
まずは簡単なところから。
公式の利用もこんな感じで
利用その①:正弦、余弦の加法定理が出てくる
指数の計算規則と虚数の定義 \( ( i^2 = -1) \) を使うと、三角関数の加法定理の導入に使える
加法定理は、確か高校(?)の頃の教科書ではいきなり出てきて、サイン・コス・コス・サインみたいな呪文で覚えさせられた記憶があるが、②式を知ってれば、覚える必要はない。
正弦、余弦の加法定理はオイラーの公式から同時に計算される。(ちなみに、(α‐β)も同じ計算方法)
この方法は、倍角の公式であろうが、3つの角の加法計算であろうが利用できる。
利用その②: 三角関数が指数関数への置き換えられる
振動系の計算でよく使用される三角関数から指数関数への置き換え
振動等の計算式で \( e^{iθ} \) とか出てくると、うぇっ!と拒絶モードに入りそうになるが、恐れずに足らず。実はただの三角関数。ハードルはぐっと下がる(はず)。
利用その③: xのn乗=1 の方程式の解も作図で答えがでる
さて、 \( e^{iθ} \) が複素平面上の単位円をぐるぐる回るっていうイメージを補完するために一例を。
方程式
- \( x^{n}=1 (n = 1,2,3・・・)\) ・・・⑩
にオイラーの公式を使ってみる。図解的解釈をすると、解は一発で見てわかる。
というのも、複素数平面上で、頂点の一つに \( x=1 \) を持つ正n角形を書いた時に、その他の頂点が \( x^{n}=1 \) の解となるためである。
以下に解説
概要解説
まずこの方程式の \(x\) を \( x=e^{iφ} \) とおくと⑩式は
- \( e^{iφ \cdot n} = 1(n = 1,2,3・・・)\) ・・・⑪
となる。つまり、\(φ \) がわかれば \( x \) がわかる。
さてここで、オイラーの公式 \( e^{iφ}=cosφ + i \cdot sinφ \) が示す複素平面の円を使う
この公式の \(φ \) の解が ”= 1” となるのは ( \( cosφ + i \cdot sinφ = 1 \) )、\(φ = 2\pi \) の点を示す時。
(整数倍も含めれば、\( φ =2 \pi k (k=1,2・・・ ) \) )
つまり
- \( e^{i \cdot 2\pi \cdot k} = 1 \ (k=1,2・・・) \) ・・・⑫
である。
つまり⑪式⑫式から、\( e^{i(nφ)} = e^{i (2\pi k)} \)
これから、\( nφ \) が、\( nφ =2 \pi k \)(k=1,2・・・)を満たすとき⑫式の解となる。これを変形して
- \( φ =\dfrac{2 \pi}{n}k \)
角度 \( φ \) は 、\( 2\pi \) を \(n \) 等分した角度の整数倍である事がわかる。
先に答えをかけば、
図で書いた方がわかりやすい。以下にて
n=1の場合 ( \( x^1=1 \) の解 )
n=2の場合 ( \( x^2=1 \) の解 )
方程式は \( x^{2}=1 \)、 \( e^{iφ} \)の円上の点が方程式の解である事を踏まえ、
\( n=2 \) より、円を2等分した点が解。
つまり \( φ = \pi、2 \pi \)(解を示す点は実数軸上)
(\( φ =\dfrac{2 \pi}{n}k、n=2 \) より \( φ =\pi k \)、\( k≦ n \) より k=1.2)
オイラーの公式を使えば解は
- \( x= e^{i\pi} = cos \pi + i \cdot sin \pi = -1 \)
- \( x= e^{i 2\pi} = cos 2\pi + i \cdot sin 2\pi = 1 \)
の二つ。
このあたりまでは、単純に因数分解を使って、\( x^2-1=(x+1)(x-1)=0 \) より \( x=±1 \)とした方が早い。
n=3の場合 ( \( x^3=1 \) の解 )
方程式は \( x^{3}=1 \)、図からみれば、複素平面の実数軸上の”1”を基準にした正三角形の各点が解
n=3を踏まえれば、\( e^{iφ} \) の円を3等分した点、つまり
\( φ =\dfrac{2\pi}{3}, \dfrac{4\pi}{3}, 2\pi \)における円上の点が方程式の解
(\( φ =\dfrac{2 \pi}{n}k、n=3 \) より \( φ =\dfrac{2\pi}{3} k \)、\( k≦ n \) より k=1,2,3)
オイラーの公式を使えば解は、
- \( x= e^{i \cdot \frac{2 \pi}{3}} = cos \dfrac{2 \pi}{3} + i \cdot sin \dfrac{2 \pi}{3} = – \dfrac{1}{2} + \dfrac{\sqrt{3}}{2} i \)
- \( x= e^{i \cdot \frac{4 \pi}{3}} = cos \dfrac{4 \pi}{3} + i \cdot sin \dfrac{4 \pi}{3} = – \dfrac{1}{2} – \dfrac{\sqrt{3}}{2} i \)
- \( x= e^{i \cdot 2 \pi} = cos 2 \pi + i \cdot sin 2 \pi = 1 \)
の三つ
n=4の場合 ( \( x^4=1 \) の解 )
方程式は\( x^{4}=1 \)
図からみれば、複素平面の実数軸上の”1”を基準にした正方形の各点が解
n=4を踏まえれば、\( e^{iφ} \) の円を4等分した点。上と同様に、
\( φ =\dfrac{\pi}{2}, \pi, \dfrac{3\pi}{2}, 2\pi \) の円上の点が方程式の解。
オイラーの公式を使えば解は、
- \( x= e^{i \cdot \frac{\pi}{2}} = cos \dfrac{\pi}{2} + i \cdot sin \dfrac{\pi}{2} = i \)
- \( x= e^{i \cdot \pi} = cos \pi + i \cdot sin \pi = – 1 \)
- \( x= e^{i \cdot \frac{3\pi}{2}} = cos \dfrac{3\pi}{2} + i \cdot sin \dfrac{3\pi}{2} = – i \)
- \( x= e^{i \cdot 2 \pi} = cos 2 \pi + i \cdot sin 2 \pi = 1 \)
の四つ
n=5の場合 ( \( x^5=1 \) の解 )
方程式は \( x^{5}=1 \)
図からみれば、複素平面の実数軸上の”1”を基準にした正五画形の各点が解
n=5を踏まえれば \( e^{iφ} \) の円を5等分した点、つまり
\( φ =\dfrac{2\pi}{5}, \dfrac{4\pi}{5}, \dfrac{6\pi}{5}, \dfrac{8\pi}{5}2\pi \)
の円上の点が方程式の解。
オイラーの公式を使えば解は、
- \( x= e^{i \cdot \frac{2\pi}{5}} = cos \dfrac{2\pi}{5} + i \cdot sin \dfrac{2\pi}{5} \)
- \( x= e^{i \cdot \frac{4\pi}{5}} = cos \dfrac{4\pi}{5} + i \cdot sin \dfrac{4\pi}{5} \)
- \( x= e^{i \cdot \frac{6\pi}{5}} = cos \dfrac{6\pi}{5} + i \cdot sin \dfrac{6\pi}{5} \)
- \( x= e^{i \cdot \frac{8\pi}{5}} = cos \dfrac{8\pi}{5} + i \cdot sin \dfrac{8\pi}{5} \)
- \( x= e^{i \cdot 2 \pi} = cos 2 \pi + i \cdot sin 2 \pi = 1 \)
の五つ。 簡単に算出できる。
その先の高次も同じ ( \( x^n=1 \) の解 )
以降の高次も同じなので省略。
(n次であれば角度 \( \dfrac{2 \pi}{n} \) の( n以下の)整数倍を順次オイラーの公式に入れてやるだけで解が出る。)
オイラーの公式を図で書いて方程式が意味する点をピックアップすれば、数字だけ見て答えを出すよりよほど理解しゃすい。。
さてあらためて
オイラーの公式は、
これが道具としてのメリット。上の方程式の解はこれを利用して求めている。
前述で \( e^{iφ} \) の動きのイメージとして、 ”\( e^{iφ} \) は複素平面で単位1の円をぐるぐるとまわっているのである ” と書いたが、この方程式の解を図形的にみる時の動きのイメージが、これに近いかと。
利用その④: ド・モアブルの公式
\( x^{n}=1 \) の方程式では、n回 回転させると”1”になる角度\( θ \)を求めて解 \(x \) にたどりついたが、式の利用であれば、回転していきつく先は別に”1″でなくともよい。
\( e^{iθ} \) のn乗である\( e^{inθ} \) は、複素平面上の単位円 \( e^{iθ} \) 上にて、角度 \( θ \) を n回回転させているという事。
つまり角度だけでいえば、\( θ \) を積算した \( nθ \)。よって、
(ちなみに、まじめに証明するのであれば、 \( e^{i(α+β)} = cos(α+β) + i \cdot sin(α+β) \) を使って、帰納法で証明( \( β=α \) で始めて、つみ重ねた \(nα \)を \( nα=γ \) とでも置き換えて\( (n+1) \) で証明可)。
追記
\( e^{iθ} \) が \( cosθ + i \cdot sinθ \) と等しい事の証明は以下。数学の歴史が詰まっている。面白い。
実数・虚数についてはこちらの本がおススメ
オイラーの公式について、こちらがおススメ。