数学一般-4)-2. 世界で最も美しい公式:オイラーの公式 その2

4) オイラーの法則

オイラーの公式を導く

前回の記事は、オイラーの公式 :eiθ = cosθ + i sinθ ・・・① の見方と使い方の例について書いた。

今回はそのオイラーの公式の導き方。

つまり、右辺の”e”と左辺の ”cosθ + i sinθ” が等しい事を説明

オイラーの公式は、基本

  • 指数関数と 三角関数の等式化

であるが、これを結びつける時に、eの指数関数と三角関数が持つ性質と、マクローリン展開(級数展開)を利用している。

本記事はこの部分を詳細に。。。

ちなみに、結論から言えば、e、cosθ 、 i sinθをそれぞれマクローリン展開して

これを使って、”e” と ”cosθ + i sinθ” が等しい事を述べているに過ぎないが、この導入過程が、微分、指数関数、三角関数、ネイピア数、虚数の特徴を、これでもかというぐらいうまーく利用している。

それぞれが別世界で定義されたものとは思えない感じ。まぁ。。とにかく、うまい事できている。
(複雑なパズルがきれいに組み合わさった時のすっきり感さえある。)

まずは、それぞれの性質から。。

ネイピア数の指数関数 \( e^\theta \)、虚数 i、三角関数 (cosθ 、sinθ)の各性質

ネイピア数の指数関数 eθ、三角関数 (cosθ 、sinθ)、虚数 i の各性質について、今回のオイラーの公式の導入に必要なトコロだけざっくりと。

ネイピア数の指数関数 \(e^θ \) の微分の性質

まず、ネイピア数 を使った指数関数 eθ

これは微分に対して、非常に特別な性質を持っている。

何度微分しても形を変えない。つまりeθ のまま。。

・・・⑧

虚数のかけ算

三角関数の微分の性質

続いて、三角関数。

例えば、sinθの微分を繰り返すと

sinθ -> cosθ -> -sinθ -> -cosθ -> sinθ

こちらは、微分を4回繰り返すと元に戻る

テイラーの定理からマクローリン展開まで

オイラーの公式を導くのに必要な道具である級数展開のうち、テイラーの定理からはじめてマクローリン展開まで説明

級数展開についての注記

級数展開というと面倒な感じがするが、要は

  • ある数(関数)を数列の和(関数の和)で置き換える事

例えば

・・・②

とあれば、数字”1” の級数展開とは、②式の右辺(分数の足し算部分)を指す。

これをちょっと小難しく書くと。。。。

和を表すΣ も使って、(Snは関数ではなく定数”1”であるが)

・・・③

のように関数として書く。以降はこの書き方

テイラーの定理

マクローリン展開は、テイラー展開の限定版。このテイラー展開は、テイラーの定理から導かれる。

といった訳で、まずはテイラーの定理から

テイラーの定理

f(x)は、n回微分可能で連続である時

・・・④

となる a <c< x が存在する。

この時の最後の項 ・・・⑤ をラグランジェの剰余項という。

何のこっちゃとなるが、、、つまり何を言っているかというと、

この定理は、 を使ってf(x)を級数展開していき(x=aを基点した微分を含む関数処理)した項を足していけば、その各項の関数の和としてできる関数はf(x) に近づいていきますよ、といっているのに加え

最後に辻褄合わせとして を、aの代わりにcを使った微分値(a <c< x)を最後の項(<-剰余項)として加えてやれば、その関数の和としてできる関数は f(x)と一致しますよ 、と言っているにすぎない。

最後のつじつま合わせの項は、剰余項と呼ばれる。
(ちなみに、級数展開方法自体も様々なタイプがあり、剰余項にも様々なタイプがある)

さて、テイラーの定理をa=0で特化したのがマクローリンの定理。

テイラー展開とマクローリン展開

さて、n -> (無限級数)とした時に、剰余項Rnが Rn -> 0に収束する場合、 f(x)はこの級数展開で置き換える事ができることになる。
(当然、Rnが0に収束せずに近似しきれないf(x)もある。)

ただ、Rn -> 0に収束する場合には、

・・・⑥

となり、これがテイラー展開によるf(x)の級数展開。

ついでに基点をa=0とした時

・・・⑦

これがマクローリン展開。

さて、指数関数eθ 、三角関数sinθ、cosθ のラグランジェの剰余項Rnは、n -> の時にRn -> 0に収束する。つまり、このマクローリン展開 を使って級数展開する事が可能。

(Rn -> 0は、ここでは既知として話を進める、証明は別途)。

さてここから、本題のオイラーの公式に。

オイラーの公式は、eθ 、sinθ、cosθ をマクローリン展開した級数の組合せで簡単に算出できる。

\(e^θ \) 、 \(e^iθ \)、 sinθ、cosθ のマクローリン展開

eθ 、sinθ、cosθのマクローリン展開を求めるのに、まずマグローリン展開

・・・⑦

の分子部分のf(n)(0) を、eθ 、e 、sinθ、cosθ に関してまとめれば。。。

微分を4回繰り返す毎に元に戻る性質は全てにおいて共通している。これを使う。

上の表を参照にマクローリン展開の式に当てはめれば、 eθ 、e 、sinθ、cosθの無限級数が簡単に出来上がり、

・・・⑨

・・・⑩

・・・⑪

・・・⑫

・・・⑬

虚数iを掛けあわせた⑩式⑬式はオイラーの公式算出用に使うため、ついでに追記。微分を4回繰り返すと元に戻る性質は、虚数の掛け算も4回繰り返すと元に戻る性質は同じ。

備忘録:⑨⑪⑫式のマクローリン展開結果

(Note: 0! =1)

オイラーの公式

さて、ここまで来たらオイラーの公式までたどり着くのは簡単。

パズルがココですっきりと組み合わさる

単純に⑩⑪⑬式をならべてみる。

・・・⑩

・・・⑪

・ ・・⑬

上の⑪式&⑬式で赤の斜線部で消している項は”0”。つまりこれらは消える。

その上で⑪式と⑬式を足し合わせれば、⑩式が姿を現す。つまり ⑩ = ⑪ + ⑬ 。あらためて

eiθ = cosθ + i sinθ

オイラーの公式が導かれる。ちゃんちゃん。

追記

前回の記事にて

この式の各要素は数学の歴史上、それぞれ別の時代 / 別の地域 / 別の定義のモノ。

つまり各々別の必要性(動機)があり、定義されてきたものであるという事。

周期関数である三角関数、非周期関数である指数関数、実数と虚数からなる複素数、マイナスの世界、何度微分しても形を変えない指数関数exの底となるネイピア数e、円周率πと、一見すると全く別物なのである。

この各世界を、ひとつの世界に集約(統合)するのがオイラーの公式。

と書いたが、導入に級数展開をも使い、過去の蓄積された数学の各世界のそれぞれのルールを崩すことなく統一しているのが、オイラーの公式。

ここが”美しい”と言われる所以。

上のテイラー展開については、こちらの本がおススメ(実数・虚数についてのおススメ本と同じ)

オイラーの公式については、この本もおすすめ。。
流し読みとまではいかないが、読み物としても面白い。

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