オイラーの公式を導く
前回の記事は、オイラーの公式 :eiθ = cosθ + i sinθ ・・・① の見方と使い方の例について書いた。
今回はそのオイラーの公式の導き方。
つまり、右辺の”eiθ”と左辺の ”cosθ + i sinθ” が等しい事を説明
オイラーの公式は、基本
- 指数関数と 三角関数の等式化
であるが、これを結びつける時に、eの指数関数と三角関数が持つ性質と、マクローリン展開(級数展開)を利用している。
本記事はこの部分を詳細に。。。
ちなみに、結論から言えば、eiθ、cosθ 、 i sinθをそれぞれマクローリン展開して
これを使って、”eiθ” と ”cosθ + i sinθ” が等しい事を述べているに過ぎないが、この導入過程が、微分、指数関数、三角関数、ネイピア数、虚数の特徴を、これでもかというぐらいうまーく利用している。
それぞれが別世界で定義されたものとは思えない感じ。まぁ。。とにかく、うまい事できている。
(複雑なパズルがきれいに組み合わさった時のすっきり感さえある。)
まずは、それぞれの性質から。。
ネイピア数の指数関数 \( e^\theta \)、虚数 i、三角関数 (cosθ 、sinθ)の各性質
ネイピア数の指数関数 eθ、三角関数 (cosθ 、sinθ)、虚数 i の各性質について、今回のオイラーの公式の導入に必要なトコロだけざっくりと。
ネイピア数の指数関数 \(e^θ \) の微分の性質
まず、ネイピア数 を使った指数関数 eθ 。
これは微分に対して、非常に特別な性質を持っている。
何度微分しても形を変えない。つまりeθ のまま。。
・・・⑧
虚数のかけ算
虚数単位 i は、・・・⑨
つまり i2= -1。
実数aに繰り返し i をかけていくと
a -> a・i -> -a ( = a・i・i) -> -a・i -> a
虚数 i を4回かけると元に戻る。
くるくる回る虚数の振る舞いについては、こちらにも少し。
三角関数の微分の性質
続いて、三角関数。
例えば、sinθの微分を繰り返すと
sinθ -> cosθ -> -sinθ -> -cosθ -> sinθ
こちらは、微分を4回繰り返すと元に戻る。
テイラーの定理からマクローリン展開まで
オイラーの公式を導くのに必要な道具である級数展開のうち、テイラーの定理からはじめてマクローリン展開まで説明
級数展開についての注記
級数展開というと面倒な感じがするが、要は
- ある数(関数)を数列の和(関数の和)で置き換える事
テイラーの定理
マクローリン展開は、テイラー展開の限定版。このテイラー展開は、テイラーの定理から導かれる。
といった訳で、まずはテイラーの定理から
何のこっちゃとなるが、、、つまり何を言っているかというと、
この定理は、 を使ってf(x)を級数展開していき(x=aを基点した微分を含む関数処理)した項を足していけば、その各項の関数の和としてできる関数はf(x) に近づいていきますよ、といっているのに加え
最後に辻褄合わせとして を、aの代わりにcを使った微分値(a <c< x)を最後の項(<-剰余項)として加えてやれば、その関数の和としてできる関数は f(x)と一致しますよ 、と言っているにすぎない。
最後のつじつま合わせの項は、剰余項と呼ばれる。
(ちなみに、級数展開方法自体も様々なタイプがあり、剰余項にも様々なタイプがある)
さて、テイラーの定理をa=0で特化したのがマクローリンの定理。
テイラー展開とマクローリン展開
さて、n -> ∞ (無限級数)とした時に、剰余項Rnが Rn -> 0に収束する場合、 f(x)はこの級数展開で置き換える事ができることになる。
(当然、Rnが0に収束せずに近似しきれないf(x)もある。)
ただ、Rn -> 0に収束する場合には、
・・・⑥
となり、これがテイラー展開によるf(x)の級数展開。
ついでに基点をa=0とした時
・・・⑦
これがマクローリン展開。
さて、指数関数eθ 、三角関数sinθ、cosθ のラグランジェの剰余項Rnは、n -> ∞ の時にRn -> 0に収束する。つまり、このマクローリン展開 を使って級数展開する事が可能。
(Rn -> 0は、ここでは既知として話を進める、証明は別途)。
さてここから、本題のオイラーの公式に。
オイラーの公式は、eθ 、sinθ、cosθ をマクローリン展開した級数の組合せで簡単に算出できる。
\(e^θ \) 、 \(e^iθ \)、 sinθ、cosθ のマクローリン展開
eθ 、sinθ、cosθのマクローリン展開を求めるのに、まずマグローリン展開
・・・⑦
の分子部分のf(n)(0) を、eθ 、eiθ 、sinθ、cosθ に関してまとめれば。。。
微分を4回繰り返す毎に元に戻る性質は全てにおいて共通している。これを使う。
上の表を参照にマクローリン展開の式に当てはめれば、 eθ 、eiθ 、sinθ、cosθの無限級数が簡単に出来上がり、
・・・⑨
・・・⑩
・・・⑪
・・・⑫
・・・⑬
虚数iを掛けあわせた⑩式⑬式はオイラーの公式算出用に使うため、ついでに追記。微分を4回繰り返すと元に戻る性質は、虚数の掛け算も4回繰り返すと元に戻る性質は同じ。
オイラーの公式
さて、ここまで来たらオイラーの公式までたどり着くのは簡単。
(パズルがココですっきりと組み合わさる)
単純に⑩⑪⑬式をならべてみる。
・・・⑩
・・・⑪
・ ・・⑬
上の⑪式&⑬式で赤の斜線部で消している項は”0”。つまりこれらは消える。
その上で⑪式と⑬式を足し合わせれば、⑩式が姿を現す。つまり ⑩ = ⑪ + ⑬ 。あらためて
eiθ = cosθ + i sinθ
オイラーの公式が導かれる。ちゃんちゃん。
追記
前回の記事にて
と書いたが、導入に級数展開をも使い、過去の蓄積された数学の各世界のそれぞれのルールを崩すことなく統一しているのが、オイラーの公式。
ここが”美しい”と言われる所以。
上のテイラー展開については、こちらの本がおススメ(実数・虚数についてのおススメ本と同じ)
オイラーの公式については、この本もおすすめ。。
流し読みとまではいかないが、読み物としても面白い。