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1. ボルト(ねじ)の名称、締結の仕組み、締め付け線図

ボルト(ねじ)の力学

はじめに

機械設計であれば、誰もが使用するねじ。。

ただ、ねじは実際に”設計”をしているというより、”勘”、”経験”、 ”踏襲(模倣)” による ”選択” をしているのが実情。

もともと ”規格品を使用する事” による ”選択” を前提とした部品であり、めったにそれ自身の ”設計” を行う事はほとんどないねじであるが、勘等による選択だけでは、たまに困る時もある。

例えば、使用中に”緩み”が発生する場合とかとか。

少し知識加えれば、より根拠のある設計(選択)が可能になる。

ちなみにおすすめの本はこの二冊

”ねじ締結の原理と設計”は、ねじの理論的背景が一通り網羅されている(式の中の定数を数字に置き換えたりで、もうちょっと素直に書いてくれれば。。。とも思うが、情報量が豊富。持っていると安心できる)

”ねじ締結概論” は、より実務的な視点から書いてある(こちらの方がよりストレート)。

この二冊があれば締結に関する調べ事はだいたい事足りる(かと)。

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ねじ(ボルト)の各部の名称

ねじの各部の名称

まずは、ねじの各部の名称。ねじにもいろいろ種類があるが、まずは六角のフランジボルトを例にとる。

ねじの呼び方

呼び径はおねじの”外径”。 ボルトナット問わず、一般的にこれがねじのサイズを示す。

ビスを除き、ボルト/ナットでは、メートルねじを意味する”M” と組み合わせてにて、M8のボルト、M10のナット等々で呼ばれる。さて、

平目ねじ(例:M10)

平目ねじは”M” に”呼び径”をつける (たとえば、呼び径10mmの平目ねじであれば、M10)。

各呼び径に対応するピッチは一種類のみのため記載不要(JIS)。

細目ねじ(例:M10x1.25)

平目ねじより小さいピッチの細目ねじの場合。

細目ねじの場合は、ピッチを追加して、 平目ねじの”M+呼び径” に、x”ピッチ”を追加(たとえば、呼び径10mmの細目ねじであれば、M10X1.25)。

その他:呼び長(首下長)も合わせた表示の場合

”M”+ ”呼び径” + ”x 呼び長(首下長)” を組みあわせた表記もよく目にする。たとえば、M6X18 -> 呼び径 6mm+呼び長 18mmの平目ねじ

(”xピッチ”と”x首下長”の表記が同じになるが、その表記されている長さとその含む意味が明らかに違うので、区別に困る事はあまりない)

まとめれば

  • ”M10”の表記のみ -> 呼び径 10mm+ピッチ1.5mm の ”平目ねじ”
  • ”M10x1.25” -> 呼び径 10mm ピッチ1.25mm の ”細目ねじ”
  • ”M6X18” -> 呼び径 6mm+呼び長 18mm の ”平目ねじ”

<かかり代と伸び代>

ちなみに、おねじとめねじの勘合する長さをねじのかかりしろ(勘合長)、ねじの首下からかかり代までの軸の長さをねじの伸び代とよぶ。

続いて、”ねじ諸元の名称と定義”について

ねじ諸元の名称と定義

ついでに、ねじ部諸元の名称については以下。(小文字:おねじ、大文字:めねじ)

  • ねじの呼び径:d (or D)
    -> おねじの山径(めねじの谷径)
  • ねじの有効径:d2(or D2)
    -> ねじの山径/谷径の間にて、山幅=谷幅の位置を径とする仮想円径 (dp)
  • おねじ谷底径(めねじ山径):d1 (or D1)
  • ピッチ:P
    -> 隣り合うねじ山同士の間隔
  • リード角:β
    -> ねじが一周まわる間に1ピッチ分上がる角度(一条ねじの場合:n条ねじの場合はn倍)
  • ねじ山半角:α
    -> ねじ山頂点の角度/2(平目/細目ねじでは2α= 60°(π/6))
    (ざっくり言えば、おねじ/めねじは正三角形の山の組合せ)
  • とがり山高さ:H
    -> ねじ山を構成する正三角形の高さ

またとがり山高さは、\( H=\displaystyle \frac{P}{2\tan{\alpha}}\)

ねじの有効径は、

\(
\begin{align}
d_2(or \ D_2) &=d-2\cdot (\displaystyle \frac{H}{2}-\displaystyle \frac{H}{8}) \\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{3}{4}H \\[8pt]
&= d-\displaystyle \frac{3P}{8\tan{\alpha}}
\end{align}
\)

おねじ谷底径(めねじ山径)は、

\(
\begin{align}
d_1(or \ D_1)&=d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{4})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{5}{4}H\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{5P}{8\tan{\alpha}}
\end{align} \)

を並目/細目ねじの基準山形として扱う。

Note:この先の軸力計算に用いるおねじの有効断面積Asには、谷底径のd1定義における切取り高さH/4 を(谷底面は円で接するとして)H/6で置き換えた径 d3を用いる。まずd3

\(
\begin{align}
d_3&= d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{6})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{17}{12}H\\[8pt]
&= d-\displaystyle \frac{17P}{24\tan{\alpha}}
\end{align} \)

であり、この谷底径d3 と おねじの有効径d2 の平均値ds がおねじの有効断面積Asの径である。ds

\(
\begin{align}
d_s&=\displaystyle \frac{d_2+d_3}{2}\\[8pt]
&=d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{6})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{13}{12}H\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{13P}{24\tan{\alpha}}
\end{align} \)

これを使い、おねじの有効断面積As

\(
\begin{align}
A_s &=\pi \cdot \displaystyle (\frac{d_s}{2})^2 \\[8pt]
&= \displaystyle \frac{\pi }{4}\cdot(d-\displaystyle \frac{13P}{24\tan{\alpha}} )^2
\end{align} \)

となる。

続いて、次ページにてざっくりと”ねじの締結の仕組み”と”締め付け線図”について

ねじの締結の仕組み(概要)

ねじによる締結とは、入力されるトルクを軸力に変換し(軸を伸ばして発生する力)、発生する軸力により被締結体を固定する事。

ボルトに入力されるトルクTf(T)は

  • ねじ部に作用するトルク(a):Ts
  • ボルト座面に作用するトルク(b):Tw

の二か所に作用し ( Tf = Ts + Tw)、

そのトルクは

  1. ボルトの軸部が伸びる事により発生する軸力(No.1)
  2. (1の発生により) ボルト座面に発生する摩擦力(No.2)
  3. (1の発生により) ボルトねじ面に発生する摩擦力(No.3)

の3つを発生させる。

また、被締結体は

  • 発生するNo.1の軸力
    :(ねじの軸方向)
  • No.1の軸力により発生する摩擦力(締結体と被締結体間、もしくは被締結体同士)
    :(ねじの軸直角方向)

により固定される。

ざっくり言うと

ボルトを(座面のついた)バネと考えればよい。

トルク入力によりバネに張力が発生。
(=ボルトでいえば軸部の伸びよる軸力の発生)

この 張力 により、軸方向と軸直角方向の動きに対し、張力と張力により発生する摩擦力により被締結体を固定する。

これが締結の仕組み。

要は張力により、被締結体を挟み込んで固定している。

このボルトの軸力発生による被締結体を固定する仕組みが”ねじによる締結”の基本。

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