締結後のゆるみ、破損
さて締結”後”に発生する締結部の問題についても。。。
実のところ問題が発生した場合は、(原因解析というより)軸力を増やすなりの即効的な対策で片付いてしまうので、それほど踏み込む事はあまりない。。。が、備忘録がわりに概要のトコロをざざっと。
締結後に発生する問題はざっくりとまとめれば以下の二つ。
”ねじのゆるみの発生”と”ねじ部の破損/破断” である。
参考書は以下
ねじのゆるみ
ねじのゆるみには、”回転ゆるみ”と”非回転ゆるみ”がある。
回転ゆるみ
締結部への外力の入力方向(荷重方向)は
- 軸のせん断型荷重(おねじの軸直角方向)
- 軸のねじり型荷重(おねじの軸にかかる曲げモーメント方向)
- 軸の引張方向荷重(おねじの軸方向)
- 軸の回転方向荷重(おねじの回転方向)
の4通り。図で見れば、以下
結論から言えば、外力入力が加わる事により”ねじ面”に軸を回転させるトルクが発生、このトルク発生時に、おねじの”座面”にもすべりが生じると軸が回転しゆるみへとつながる。
つまり、ねじ面に回転させるトルクが発生しても、座面にすべりの発生がなければ、回転ゆるみは発生しない。
ちなみに、4.の荷重以外ねじが締まっていく事はない
(= 軸力が上がっていく事はない)
詳細は参考書へ、以下に少しだけ概要を
座面のすべり(ずれ)と軸力低下
軸力は摩擦力によりその力を保持、また、その摩擦力は座面とねじ面で発生する。
1.のせん断型荷重が入力された場合
外力(せん断型荷重)が入力されると、ねじ面(リード角によりらせん状に続く斜面)に分布している摩擦力の分布が外力込みの分布へと変わる(せん断力に直角面かつ中心軸に対称)。
ちなみに、この分布の変化はねじ斜面上である事を踏まえれば、ある点に上り方向の力が加わわれば、その反対側の点(中心軸で対称の点)には下り方向に力が加わる事を意味する。
斜面の原理を踏まえれば
締め側トルク(上り側)> 緩め側トルク(下り側)
これを踏まえれば、せん断型荷重の外力が入力されれば常に下り側に動く。つまり、軸を下り側に回転させる方向に力が働く。
-> 緩め側に回転するさせる方向への力
またこれがせん断型荷重が入力された時に、回転ゆるみを発生させるトルクの元になる力。
(ちなみに、斜面の原理については以下をご参照)
<せん断型荷重にてゆるみが発生する場合>
せん断型荷重の入力によりゆるみを発生させるトルクがあったとしても、(摩擦力により発生している)”座面”のトルクが、このトルク以上あれば軸は回転できず、ゆるみの発生は起きない。
逆に座面がすべってしまえば、そのすべり発生により自身の軸力が保持できず、低下した摩擦力とつり合う軸力まで低下する。
つまり、”座面の摩擦力によるトルク” と ”外力によるねじ面に発生するゆるめトルク” の相対的な関係により、ゆるみが発生するかどうかは決まる。
が、、まぁ、分解すると座面が荒れているのはよく見るので、、、
-> ”座面がすべれば、ねじはゆるむ(軸力は落ちている)”
事は頭の片隅に入れておいた方が良い。
<対策>
詳細は参考書参照として、このゆるみへのタフネス向上としては、ねじ面の摩擦力分布の変化がなるべく発生せず、座面はなるべくすべりにくくすれば良い。つまりタフネス向上策としては
- 座面:大きな摩擦係数
- 軸力:なるべく大きく
- おねじ軸径:なるべく細く
(->せん断方向の荷重による座面のずれを伸び代部にて吸収) - おねじの伸び代:なるべく長く
(->せん断方向の荷重による座面のずれを伸び代部にて吸収) - ねじのかかり代:なるべく小さく
(->摩擦力分布の変化による緩め方向に働く力を低減) - ねじの精度:おねじとめねじの軸直角方向のスキマが大きく
(ねじの精度が悪い方がよい)
が策となる。
2.の曲げモーメントが入力された場合
これはせん断型荷重が外力として入力される場合と同じ
3.の引張方向荷重が入力された場合
この荷重により回転ゆるみが発生する場合は、あまりないので詳細割愛(詳細は参考書参照)
4.の回転方向荷重が入力された場合
右回りのトルク、左回りのトルクが交互に作用する場合、おねじを締める側にすべる場合は座面ですべり、おねじを緩める側にすべる場合はねじ面で滑り続ければ、おねじがゆるみ方向に回転し続けゆるみにつながる。
つまり回転方向荷重に対するゆるみは、座面とねじ面のすべりやすさの相対的な関係に依存する事になる。
<対策>
詳細は参考書参照として、このゆるみへのタフネス向上としては
- 座面:大きな座面径、大きな摩擦係数
(->座面は相対的にすべりにくく) - ねじ面:小さな摩擦係数
(->ねじ面は相対的にすべりやすく) - ピッチ:細目ねじ(ピッチ小)
(->相対的な滑りの成立範囲を狭く) - おねじの伸び代:細い軸かつ長い軸
(->伸び代部で相対的な滑りの成立範囲を狭く)
の設定が策となる。
非回転ゆるみ
上記は座面にすべり(ずれ)が発生しねじが回り軸力が低下する場合。
これに加え、ねじが回転せずとも軸力低下が発生する場合を以下に。
伸び代の減少
締結後に被締結体側の”圧縮代”が減少、それに伴いおねじの伸び代が減少し軸力が低下する場合。減少する主な要因は以下。
- 各接合面の摩耗
- 被締結体のなじみ、へたり
締結後の塑性変形
締結時/後に、おねじ/被締結体側が塑性域となり、伸び代は変わらなくても、ばね定数の変化により軸力が低下する。
- ボルトの塑性伸び
- ボルトのクリープ変形
- 被締結体の塑性縮み
- 被締結体の圧縮クリープ
(可逆)温度変化
- おねじ、被締結体の熱膨張差
- ヤング率の変化
各項目の詳細は参考書へ
改めてにはなるが、トルク法での管理は組み立て部品が主対象である故、以下は頭の片隅に。。
上述の”伸び代の減少”の一部である、”初期なじみによる軸力低下”。
これは部品を組み合わせて締結する以上、どうしても避ける事ができない。
対応としては、低下分に配慮した軸力設計値(余裕のあるボルト設定)とするか、初期作動後(慣らし運転等)に、”増し締め指示”をする等の配慮が必要(特に初回メンテ時) <- これは設計指示
ねじの破損、破断
ねじの破断には締め過ぎによるねじの静的破断以外にも、
- 繰り返し荷重による疲労破壊
- 一定時間経過後に突然発生する遅れ破壊
が存在する。こちらも詳細は参考書へ。。
ついでに
”知っておいて便利なコト”ついでに、次の記事は締結時に知っておいた方が便利なコトを
(まだ準備中)