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5. 詭弁(きべん)術を知っておく: 三段論法の複合形、両刀論法、消去法、ドミノ論法の誤りを利用した詭弁

詭弁術

前回の記事は三段論法の規則(包むという事)の定義と誤りを利用した詭弁につて

今回が最後、三段論法にも色々な変形型/複合形がある。最後に詭弁に対応する時の心構えもついでに。

三段論法の複合形を使った誤り

三段論法には色々な変形、複合形がある。変形の一例として

「PならばQである」 &「Pである」

故に「Qである」

とする論法である。Pに「犬が西を向いている」、「Qに尾が東を向いている」を与えるとよい。

また、複合形の一例として“アリストテレスの連鎖式”と呼ばれる次の形がある。

「AはBである」 & 「BはCである」 & ・・・& 「YはZである」

故に「AはZである」

“風が吹けば桶屋が儲かる”はこの論法。

両刀論法(ジレンマ)を使った誤り

基本形としては。P,Q,R,Sを命題とする。

(第一段)PならばRで、QならばSである

(第二段)PかQかである

(第三段)故にRかSである。

例としては、ギリシャ時代に母親が息子に語った言葉の一部。

(第一段)
「お前が真実を語れば世間の人に悪く思われ、お前が嘘をつけば神様に悪く思われる」

(第二段)
「お前は真実を語るか嘘を語るかである」

(第三段)
「故に、お前は世間の人に悪く思われるか、神様に悪く思われる」

要は、母親は息子に“お前は人前で話さない方がよい。”という事をいいたかったらしい。

世間も怖いし、神様も怖い、進退きわまるジレンマである。

この様に事態を「Pであるか、さもなくばQである」と二つに分けて追い詰めていくとき、

分けられた事項P、Qを角という。

その角が二つのものを両刀論法、三つのものを三刀論法、四つを四刀論法、五つ以上を多刀論法という。

両刀論法は以下の四つに分けられる。

簡単構成的 両刀論法

「PならばRであり、QならばRである」

「Pであるか、またはQである」

故に「Rである」

複雑構成的 両刀論法

「PならばRであり、QならばSである」

「Pであるか、またはQである」

故に「Rであるか、Sである」

簡単破壊的 両刀論法

「Pならば、RかつSである」

「Rでないか、またはSでない」

故に「Pでない」

複雑破壊的 両刀論法

「PならばRであり、QならばRである」

「Rでないか、またはSでない」

故に「PでないかまたはQでない」

上記4つは図を描くと分かりやすいが、複雑なため、実際には詭弁に陥る事が多い。

また、詭弁として使われる場合には、

小前提「Pであるか、またはQである」に二分法を持ってきてごまかされる事が多い。

選言不完全の虚偽と呼ばれる、選言とは「または」による場合分けの事。

先のギリシャの母親の例からすると、実は

  • 第一段では“人に良く思われる真実をしゃべる”
  • 第二段では“意味のない事をしゃべる”

という選択肢もあるが、そうそうは見抜けない。

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消去法(選言的三段論法)を使った誤り

答えの可能性のない物を消し込んで行き、最後に残った答えに対し確認を行い、正解と推定する方法

数ある答えの中に正解があれば問題はないのだが、無い場合、最後に残ったものが自動的に正解となってしまうため、結果詭弁となる。

詭弁家は最後の結果の確認作業を巧妙に誤魔化す。

また選択する根拠にも悪用される。例えば、ある事項に対する戦術(解決策)がT0~T9まで存在したとする。

ある者は

「T0~T9以外の手法では解決は出来ない」

「T1~T9までは実行不可能である」

よって「正しい戦術はT0である」

もしくは

「T0~T9以外の手法では解決は出来ない」

「T0~T2までは実行不可能であり、T4~T9までは非現実的である」

よって「正しい戦術はT3である」

この例から見られるように、”実行不可能”、”非現実的”等々の根拠/検証が曖昧な基準であっても、一旦設けて受け入れさせ、その上で消去法を使用すれば、望みの結論を導くことは出来る。
<- 理由は何とでもなるし、判断根拠としてそれっぽく聞こえる。
(前提条件をザーッと一気に話をして、皆が理解する前に選択肢を消去していき、これしかない!みたいな主張をする輩がそうである。)

また、消去法の基本形としては以下の二つ

結論否定型

「AはBまたはCのどちらかである」

「AはBである」

故に「AはCではない」

結論肯定型

「AはBであるか、さもなければCである」

「AはBでない」

故に「AはCである」

正しい論理を使用している場合、

  • 結論否定型の場合、概念BとCは互いに相容れない概念でなければならない。
  • 結論肯定型の場合、概念BとCとで概念Aに当てはまるもの全てを尽くしていなければならない。

ここがおかしければ、主張自体がおかしい。要注意。

例えば、

「この図形は円か三角形で定義できる」という主張は、詭弁において結論否定型は使いやすいが、結論肯定型には使いにくい。

結論否定型

主張: 「この図形は円または三角形のどちらかで定義できる」

条件:  「この図形は円である」

結論: 故に「この図形は三角形ではない」

結論肯定型

主張: 「この図形は円であるか、さもなければ三角形で定義できる」

条件:  「この図形は円でない」

結論: 故に「この図形は三角形である」

この場合、結論肯定型においては、結論を肯定しなければならないので、結論の断定理由が“?”であると、視点が条件にさかのぼり、そこから主張自体があやしいことがすぐにわかる
(図形は他にも四角形、六角形・・山ほどある)。

結論否定形においては、結論自体は間違いではないので、主張のあやしさは指摘されないかもしれない。。

よって、前提が曖昧にもかかわらず、“これしかない“との結論に導くには結論否定型は便利。
確認の視点が主張までいかず、条件、結論までで視点とまる可能性が高いためである。

ほかにも、

「犯人はA,B,CまたはDである」といった前提は、
真犯人が必ず四人の中にいなければ結論肯定型に持ち込めない(そもそも意味をなさない)。
また、共犯の可能性を考えると結論否定型の前提としても、使う事ができない。

大前提をめぐるこれらの誤りは「選言不適切の虚偽」と呼ばれ、消去法乱用の隠れた原因であり、大前提の省略、曖昧にされている時は、詭弁となる可能性が高い。

ドミノ理論を使った誤り

これは「一つが倒れると全てが倒れる」理屈のこと。

「よい人生を送るためにはよい就職を」

「よい就職をするためにはよい大学へ」

「よい幼稚園へ」

となり結果「よい人生を送るためには、よい幼稚園へ」。

結論がおかしいと思うときにはどこかに詭弁が入り込んでいる可能性がある。

この場合は二分法+ドミノ理論である。

ドミノ理論の対処法は、結局「本当にドミノ倒しが起こるのか?」「それにもし従った場合のプラス効果とマイナス効果のバランスは取れているのか?」のチェックしかない。

最後に、あれ?詭弁かも。。と気づいた時の対応について(心構え)

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強弁、詭弁への対処する時の心構え

結局、強弁/詭弁に対処するには、

  • 「健全な常識をもつ」
  • 「言葉の意味に敏感になる」
  • 「数字にだまされず、かつバカにはしない」
  • 「無理な説得はしない」
  • 「時間をおしまない、議論を打ち切らない」
  • 「結論の吟味」
  • 「わからないことを恥じない」

といった事につきるのだろうとの事。

ただ、相手が詭弁を使っていると気づいても、議論の最中に“それは詭弁だろう!”と指摘をしてしまうと、多くの場合議論が紛糾する。

無駄に議論を盛り上げるのではなく、おかしいと気づいたときに、”ん?。。という事は、相手の真の意図(背景)は何だろう?”と自分が考え始めるへの”きっかけ”、もしくは、議論の中でそれを探る事が出来るぐらいの“ゆとり”、があれば上等。

目的は議論から強弁/詭弁を排除し論理に基づいた妥当な結論を導く事であり、相手の詭弁を指摘することではない。

逆にであるが、発言の信頼感を得る/説得力を高めるには、自分の発言の根拠(客観性のある土台)を明確にし、詭弁を織り込まずに正確な論理を使って発言すれば話が分かりやすくなり、必然的に結論への同意を得やすくなる。

以上

強弁/詭弁についてはこちらがおススメ

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