慣性-2)-1. 慣性力:一次元の直線運動で発生する慣性力と、二次元の回転運動で発生する慣性力(遠心力)

2) 加減速、遠心力

慣性力について

慣性については、ニュートン(1642-1727)の運動の第1法則から

”すべての物体は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける”

-> 外部から力が働かなければ等速でまっすぐ飛んでいく、

って当たり前じゃんと、さらっと流してしまうのだが、ここは要注意。

これは、

  • 物体には、慣性がある事
    (元の動き(速度、方向)をそのまま維持させる性質)
  • 物体の動きを変える時には”力”がかかっている

という事。

物体には、”その時点の方向、その時点の速度のまま、真っ直ぐに飛び続ける” という性質が備わっている。

この性質が慣性である。

逆に、外部から力がかかった時には、”物体の動きが変わる”。力が途切れれば、その瞬間から再びその時の動きを維持する。

さて、物体の動きの変化がわかるのは、その物体の動きを外部から観察できる人のみ

Note:この外部の観察者がいる座標系を慣性系(ガリレオ系)という。

(ニュートンの運動法則はこの慣性系で成立する。物体の中では、力を加わえていないのに、物体の動きが変わるため、慣性の法則は成り立たない、つまり内部の観察者のいる座標系は慣性系ではない。)。

つまり、物体の中にいる人は、物体の中の風景は一切変わらないため、自分が乗っている物体が動いている事、また動きが変わったとしても、その事自体認識できない。

ただし、自身の慣性により、元の動きを維持する方向に動いてしまう。つまり力がかかった感じる。

-> この力がかかったと誤解される力が慣性力と呼ばれるものである。

見せかけの力と言われる所以である。

ついでに、慣性の大きさは運動量(質量x速度)で表される。重たくて速いものは方向が変えにくい。

(ニュートンの運動の三法則(運動量についての解説あり)はこちらから)

ここまでが前置き。

等速直線運動をしている物体に、外部からかける力のパターンによって、慣性力と呼ばれるモノの種類が変わる。(慣性力、遠心力、ジャイロモーメント、コリオリ力)

遠心力までを以下に記載。

一次元:進行方向に発生する慣性力:加速、減速

発生する状況:”進行方向”と”力の向き” が同じ場合

外部からの力の向きが、物体の動きと同一直線上に働く場合(1次元)。

この場合は、シンプルである。物体の動きは単純に加速もしくは減速となる。

電車に乗っている乗客を例にとれば、電車の加速中、乗客はシートに押し付けられていると感じる。これが一番シンプルな慣性力。

実際には、乗客を押しつけている力は発生していない。

これは、そもそもの慣性に従い、乗客は元の速度を維持しようとしているだけ。外部からの加速力がシートを経由して乗客を後ろから押す。

ただここで、電車自体が加速している事を認識できない乗客は、シートに自分を押しつける力が発生しているという認識となる

これが加速中に発生する慣性力

二次元:進行方向に直角の慣性力: 遠心力

発生する状況:”進行方向”と”力の向き”が直角の場合

物体の進行方向と、外部からかける力の向きが直角をなす場合である(2次元)。

この等速で動く物体の進行方向に”同じ”力を直角にかけ続ける事は、物体にとっては円運動をさせられる事を意味する。

というのも、物体は慣性に従った方向に移動し続けようとしているだけ。これに対し、常に直角方向に進行方向が強引に曲げ続けられるのである(直角方向であるため、結果として物体の動くのは円の接線方向に従う事になる)。

また、同じ力をかけ続けるのであれば、この直角方向の力の向きは、同じ点に向かう(=円の中心)。また、円の中心点に向かうため、この力は向心力と呼ばれる。向心力は実際に外部から入力する力であるため、見せかけの力ではない。

円の接線と接点と円の中心を結ぶ直線は常に直行

(この物体の周回する動きを観察できる座標系が慣性系:外部の観察者(b))

さて、遠心力。。

遠心力は、向心力を物体に作用させた際に、物体が向心力にあがなって慣性を維持をさせようとするが故に発生している様に見える”みせかけの力”である(実際には働いていない)。
向きは向心力と反対方向。

” 見せかけの力 ”とは

例として、ロープ付きのボールを周回できる装置があるとする
(周回させると、ボールは宙に浮く)

装置の外部にいる観察者(a)と装置と同じ回転速度で回る観察者(b)と の二人がいるとする。
(観察者(b)は、自身も回っておりその周回運動は認識できないと想定)

この時装置が回転を始めれば、観察者(a)からすれば、ボールはただの周回運動開始。つまり。ボールの慣性による方向の維持に対して、向心力により向きが曲げ続けられる運動(円運動)を観察するのみ。遠心力は観察できない。
これに対して観察者(b)は円運動は観察できず、その代わりにボールに(外に引っ張られる)力が働き、ロープ長にあわせた一定位置でとどまっているように見える。

この観察者(b)が観察する外に引っ張る力が、”遠心力”。
(慣性による見せかけの力)

追記

結局のところ、

外部の人から見ると、力を作用させると、物体が加速をしたり(一次元で作用)、円運動(二次元で作用)をしたりするが、、、

物体と共に動いている内部の人は、もし外部の情報をまったく得られないとすると、それが遠心力か加速/減速力かどうかはわからない。ただ、慣性力を感じる事だけである。(フライトシミュレータ等での体感と同じ)

慣性力を感じ、またその慣性力が遠心力と認識できるのは、物体と共に動いている かつ その物体がどう動いているか認識できる人のみである。

さて、回転体にさらに力を加えた時に発生するジャイロ効果については以下に

ちょっと視点は違うが同じ慣性力であるコリオリ力については以下に

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