はじめに
エコーチェンバー現象とは、似た意見ばかりに接することで個人の認識が偏り、自分の認識が多数派だと誤認しやすくなること。
概要はこちら
人の判断がエコーチャンバー現象によりどう影響されるかの解析は、認知的精緻化モデル(ELM)をベースにするとわかりやすい
リンク: 認知的精緻化モデル(ELM)
<概要>
認知的精緻化モデル(ELM)とは、人が説得情報を処理する際、内容を深く吟味する中心ルートと、雰囲気や手がかりに基づいて判断する周辺ルートの二経路があると説明する理論。
どちらが用いられるかは受け手の関心や理解力に左右され、中心ルートによる態度は安定し、周辺ルートによる態度は変わりやすいとされる。
- 中心ルート × 論理(アルゴリズム)的判断 → 判断は安定・持続的・変わりにくい
- 周辺ルート × 直観(ヒューリスティック)的判断 → 判断は不安定・一時的・変わりやすい
また、
- 深く考えるかどうか(中心ルートを通るかどうか)は「動機 × 能力」で決まる。
- 両方高いと中心ルート、どちらか低いと周辺ルート
1. エコーチャンバー現象を認知的精緻化モデル(ELM)で言い換えると
SNSのエコーチャンバーは、周辺ルート(より感情に訴え、ひとに深く考えさせない)を使い
- 似た意見・感情・立場の情報に何度も触れさせる
- それを人の所属やアイデンティティと結びつかせる
ことで生じる。これは
- 繰り返し接触
- 社会的同調の固定化
- アイデンティティ結合
が同時に起きる状態となる
2. なぜ「不安定なはずの周辺ルート判断」が固まるのか
ELMによれば、
- 周辺ルート → 判断は不安定
のはず。ところが条件がそろえば「不安定なはずの判断」が「非常に強固な判断」へと変化する。
条件とされるのが、次の3点
① 繰り返し接触
同じ主張・同じ感情表現を何度も見ると、
- 「考えた結果」ではなく「見慣れているから正しい気がする」
という感覚が生まれる。
→ これは中心ルートを通らずに態度強度だけが上がる状態。
② 社会的同調の固定化
SNSでは、
- いいね
- リポスト
- 同意コメント
が即時に可視化されることにより
- 「これはみんながそう思っている、もしくは正しいと思っている」
- 「逆らうと浮く」
という圧がかかり、判断が“個人の思考”から“集団規範”に変わる。
③ アイデンティティ結合
その意見が、
- 政治的立場
- 道徳
- 善悪
- 仲間/敵
と結びつくと、違う意見 = 社会における自分の立場を否定すること、になる。
③まで到達すると、
- 判断の根拠が論理かどうかは関係なく、「心理的に変更不能な信念」となる
3. 特徴:「見かけ上は安定、構造的には脆い」
見かけ上は安定
- 強い確信
- 感情的防衛
- 反対意見への攻撃性
構造的には脆い
- 中心ルートでの検討を経ていない
- 前提が崩れると一気に瓦解する
- 外部環境が変わると急激に反転する
→「論理的に強い」のではなく「心理的に動かせない」だけ
つまりエコーチャンバーは「考え抜いた結果の確信」ではなく、感情に訴えられた情報に繰り返し触れることにより、「考えない状態が長期化・集団化した結果」
ただし人の性 。脳は認知負荷コストはなるべく下げるために、判断を行うのに周辺ルートを主に使用ししているととることもできる(認知負荷理論)。
つまり、人の心理としてそういう風に動いてしまう。つまり、人はそもそも踊らされやすい潜在的な心理構造をもっている。
5. 一旦まとめ
ELM的に一文でいえば
- SNSのエコーチャンバーとは、周辺ルートによるヒューリスティック判断が、繰り返し・同調・アイデンティティ結合によって中心ルート並みの強度を持ってしまった状態
これはSNSによる今現在の話だけではなく、戦前、戦後の大衆心理の変化に近いとも見ることができる
