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[人の心理]人はなぜ ” 理性的” より ”感情的” なニュースに惹きつけられるのか?:注目される情報(記事)の仕組み

人の心理

はじめに

既存メディア/SNSの関係の記事の中で、(既存メディア/SNS共通の要因として)人の感情(心理)を利用する要因が幾つか含まれていた(No.12-14)。

確かに人の心理を利用している感(基本、感情 > 理性の状態)があるが、そもそもどんな心理傾向を利用しているんだっけ?と。

結論から言えば、

人の注目を集める記事は、「感情を揺らす」情報を提示し、人がその処理(共有・解消)のために情報処理を働かせることを利用する。

以下がそのまとめ詳細

人の注意が情報に向くのは「感情が揺さぶられたとき」

認知心理学からすると、人の注意が強く自動的に外部刺激に向くのは、感情が揺さぶられたとき。感情が動かない刺激には、人は自発的な注意資源を割きにくい

  1. 自動的な注意(ボトムアップ処理)と感情
    恐怖、怒り、歓喜などの感情を揺さぶる刺激(情動刺激)は、脳の「扁桃体」などで瞬時に処理される。これは生存に直結する重要な情報であるため、個人の意思とは無関係に、強力かつ自動的に注意が引きつけられる傾向がある(ボトムアップ的注意捕捉)。
  2. 自発的な注意(トップダウン処理)の限界
    一方で、感情を動かさない無機質な刺激や、興味のない対象に対しては、人は意識的に努力して注意を向ける必要がある(トップダウン的注意資源の投下)。しかし、人間の注意資源は有限(認知負荷理論)であるため、強い動機や感情的な引っかかりがない限り、その資源を維持・割くことは心理的に大きなコストとなり、長続きしない傾向がある。

さて、その外部刺激の一つである情報を「ポジティブ感情(快)を生む情報」と「ネガティブ感情(不快)を生む情報」の二つに分ければ、それぞれ

  • ポジティブ感情(癒し・娯楽・好奇心・美的感動)に導く「心地のよい快情報」:
    低覚醒(リラックス・安心・ぼんやり楽しむタイプ)の快情報は、注意は向くが記憶に残りにくく共有されにくい傾向がある。
    自身の関心事として能動的に「快情報」を探した場合に初めて、深い処理や記憶・共有につながる傾向をもつ。
  • ネガティブ感情(不快・不安にさせる)に導く「居心地の悪い不快情報」:
    不快情報は認知的不協和を生みやすく、心理的緊張状態を生みやすい。不快の回避を選ばない限り、人はその不快の解消のため、能動的に情報処理を行う傾向がある。

つまりネガティブ感情に導く情報に対しては、人はすべからく情報処理を行う傾向をみせる=注目度が上がりやすい構造をもつ。

さて、ではネガティブ感情に導く「居心地の悪い不快情報」とは何か?

実用的には、以下の6項目に集約して整理できる。

「居心地の悪い不快情報」の代表的な6パターン

不快の内容感情の核惹きつける情報例誘因となる心理対応する
心理学理論

不安・
不確実性
不安・恐れ・混乱
(予測不能感)
説明”と“意味づけ”をしてくれる情報

「なぜ今こうなっているのか」
「実は○○が起きている」
「多くの人が勘違いしているポイント」
不安を減らしたい
状況を理解・予測したい
不確実性低減欲求
(意味づけ欲求)

不公平感
怒り
(道徳的憤り)
“怒り × 正当化欲求“にふれる情報

「不当に得をしている人がいる」
「同じルールでずるをしている人がいる」
「ダブルスタンダードがある」
怒りを正当化したい
損している感覚を回復したい
公正世界仮説
(道徳的憤り・
報い期待)

言語化できない違和感
不快・
漠然とした不安
“代弁”してくれる情報

「そのモヤモヤ、実は○○です」
「違和感の正体を分解するとこうなる」
違和感の正体を知りたい
意味をつなげたい
予測誤差理論
(意味づけ欲求)

認知疲労・
怠さ
面倒くささ・
疲労感
”思考の省エネ“をしてくれる情報

「図解で解説」
「たとえ話で説明」
「要点は3つだけ」
考えずに理解したい
思考コストを下げたい
認知負荷理論

自尊心の揺らぎ
防衛・
安心欲求
”安心(同調)と優越感(下方比較)を同時提供してくれる情報

「それを疑問に思うのは正常です」
「分かっている人はこう考えている」
自分が間違っていないと確認したい
安心と優越感を得たい
社会的比較理論
(同調・下方比較)

価値観の衝突・嫌悪
嫌悪・
拒否感
「それ、実は倫理的に問題があります」自分の価値観を守りたい道徳基盤理論(Haidt)

人の脳はもともと、

  • 危険を避ける
  • 集団内の不公平を察知する
  • 自分の立場を守る
  • 認知コストを下げる

ために進化しており、①〜⑥はすべて、生存・集団適応に直結するシグナル。よって、強く反応するとされる。

特に拡散・議論を生みやすい情報は「感情を揺らす」情報に、②の「怒りを正当化したい」心理(公正世界仮説)か、⑤の「自分が間違っていないと確認したい」心理(社会的比較理論)が利用される傾向がある。

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脳の報酬系の反応

これらの心理に脳も反応する。脳科学的な研究から、

嫉妬や競争関係にある他者の不幸を見た際、脳の「側坐核(そくざかく)」という報酬系部位が活性化する
(ドーパミンが出る)

ことが分かっている。ドーパミンは多幸感に作用することが知られ、これは美味しいものを食べた時、ギャンブルで勝った時と同じ反応。

つまり、文字通り脳にとって「蜜の味」として処理している事と同義 → 情報への共感を促していると考えられる。

まとめ

つまり、ネガティブな記事を読むことで人の脳内には情報処理を開始させ、その処理の中で自分の正義の肯定、もしくは自尊心の相対的な向上ができれば、脳内にドーパミン発生、情報への共感を促す。

少し詳細にかけば

  1. 「感情を揺らす」情報に接した時、それがネガティブ情報(脳が不快とする(居心地の悪い)情報)であれば、不協和の解消のため脳内に情報処理が働くことから、自然にその情報に注目してしまう事
  2. 自分の世界は公正にできているとの信念から、「不当に得をしている(ように見える)人」が不幸になると、脳は「当然の報いだ」と解釈:怒りの肯定(公正世界仮説)
  3. 自分より順調そうに見える他人の失敗・不祥事は、自分の(具体的な数値で測れない考えの正しさ、自分の能力の価値である)自尊心が相対的に向上(社会的比較理論)
  4. 脳内にドーパミンが発生する(すっきり感=快感を覚える)
  5. 情報への共感(場合によっては、主張する集団への帰属)

この心理傾向を利用、これに加え直感型説得を含むパターンをもてば、人はその情報を処理しやすく(受け入れやすく)なる。

これは、直感(ヒューリスティック)型説得の 人のなるべく認知負荷なく理解しようとする傾向(情報採餌理論・認知負荷理論)” も利用する意味であり、これにより”その情報(記事)は多くの読者を集める” 可能性がより高くなると考えられる。

これからすると、既存メディア・SNS問わず現在でも見られる、権威・感情・同調のヒューリスティクを利用し不協和をあおる型(正義感・自尊心を刺激する型含め)は、人の心理傾向を利用した”考えさせずに(直感・感情論で)注目させる型” を利用していると見ることもできる。

基本構造は意外とシンプルにみえる。

また、この型とエコーチャンバーの関係性については以下にて

追記

よくわかっていないのに切り取られたニュースだけをみて、もし

  • 自業自得だ」という言葉が浮かんだら、それは不公平感に対する人の心理を利用ているかもしれない(怒りを生むことで注目を集める)
  • 少数派である事への不安/多数派であることの安心を感じたら、それは自身の安心を守るための脳の防衛反応が利用されているかもしれない
    ( →自尊心を揺することで”みせかけ”の多数派への誘導されているかもしれない)。

と注意するのもよい。ちなみに最近多い、「嫌悪感」を刺激するニュース(情報)はこの二つの合わせ技と見ることができる。

結局流されないようにするには、怪しいと思ったときはまずは一呼吸置き、”思考の省エネ“せず ”客観視” すること。

これが、”情報の発信者”に踊らされないための防御壁となる。

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