情報採餌理論(Information Foraging Theory)とそれに基づく情報設計
報採餌理論(インフォメーション・フォーラジング理論)とは、人は情報探索を餌探しのように行い、見出しやリンクなどの手がかりから得られそうな価値(情報の匂い)と、時間や理解の手間といった探索コストを比較し、最小の労力で最大の成果が期待できる経路を選ぶと説明する理論。
人は情報を探すとき、「この先に役立つ情報がありそうか」「それを得るコストはどれくらいか」を無意識的・直感的に評価する。
つまり、情報の匂い(「リンク文言」「見出し」「サムネ」「メタ情報」)から有益さの匂いが強い(得られそうな価値が高い)ほど人は進む。
ただし、探索コスト(「クリック数」「スクロール量」「読解の難しさ」「認知負荷」)が高いと離脱する(楽な方がよい)。
(注:「情報の匂い」は実際の情報価値を保証するものではなく、誤誘導されることもある。)
つまり、人は利得(「問題解決に役立つか」「不安が減るか」「意思決定が進むか」)を動機とし、情報採餌理論をもとにした行動原理(概念モデル)は、
「探索効率」= \( \dfrac{「得られそうな価値」}{「かかりそうなコスト」} \) (厳密な数式ではなく、人の判断を説明する概念モデル)
の値が最大になる経路を選ぶ。
これは完全合理性ではなく、限定合理性のもとでのヒューリスティックな最適化。
つまり人は損得計算というより、いかに“楽”に手に入るかどうかで動く ←「人は無意識に“比率っぽい判断”をする」
ここでの良い情報設計とは、「正しい情報を置くこと」ではなく「正しい情報に辿り着ける匂いを設計すること」となる。つまり
- 見出しで期待を裏切らない:情報の匂いと情報の価値のバランス
- 階層を浅くする:探索コストの低減
- 段階的に詳細化する:認知負荷を段階的に増やす
他の認知理論との連動関係
ちなみに、
- <4. 情報採餌理論>(どの情報に近づくか)
- <3.認知負荷理論>(その情報を理解できるか)
- <1.認知的精緻化モデル>(理解がどれだけ安定するか:中心/周辺ルート違い)
の3つは連動する。
根拠がなくとも説得力があり、かつ注目を集める情報(記事)
この情報設計の仕組みは本来、ユーザーの負担を減らすためのものであるが、説得や扇動に使われると問題が生じる。
つまり、悪用しようとすれば、
- 「強い感情」「単純な善悪」「断定的表現」等の強い匂いの情報を見出し
- +「皆が思う」「○○教授によれば」等にて、多数派や権威を利用した情報(周辺ルートの利用とヒューリステックの利用)
- +「クリックしやすさ」「スクロール量の低減」を図り、情報へのアクセス労力を低減(探索コストの低減 その1)
- +「内容の精緻さ」より「分かりやすさ」を図り、認知負荷を低減(探索コストの低減 その2)
とすれば、認知負荷の低い(考えなくとも理解した気になる)かつ探索効率の高い情報となることから、
結果として、根拠がなくともの説得力がある、かつ注目を集める情報になる。
→ 例:タブロイド紙の記事、テレビのワイドショー、SNSでの扇動記事によくみられる構造