演繹法の概要
演繹法とは、前提が真であり、かつ推論形式が妥当である場合に限り、結論も必ず真となる推論法である(「真理の保存」)。
-> 前提(真と仮定された命題)から、論理的に含意される結論を導き出す推論法。
演繹法は命題論理や述語論理などの形式に基づく推論であり、三段論法はその代表的な一形式。
その特徴は、「すべての前提が真であり、かつ推論形式が妥当であれば、結論は必ず真となる」ことである。
また、前提が偽の場合を踏まえれば、演繹は「正しさを保証する道具」ではなく「前提に含まれる関係を形式的に展開する推論」とも見ることができる。
つまり、推論形式が妥当であっても、前提が偽であれば結論の真理は保証されない。
(ただし、前提が偽であっても結論が偶然真になる場合はあり得る)。
演繹法の基本単位(推論形式:三段論法)
三段論法は2つの前提から1つの結論を導く推論形式をもつ(合計3段)。
論法:
- <前提1>全てのAはBである
- <前提2>全てのCはAである
→ <結論1> よって、全てのCはBである
例:
- <前提1>すべての犬は動物である
- <前提2>すべての子犬は犬である
→ <結論1> よって、すべての子犬は動物である
ちなみにこの例は、三段論法の中でも最も基本的な格と型を組み合わせた論法である。
三段論法の組み合わせによる演繹法
さて、上の例の<結論1>を次の三段論法の<前提2>に組み込み、新たな前提<前提1>を適用して展開すれば、”新たな結論”を導くことができる。
例えば、
- <前提1>すべて動物は呼吸をする ← 新規前提条件
- <前提2>すべての子犬は動物である ←上の三段論法の”結論1”
→ <結論> よって、すべての子犬は呼吸をする ← 新たな形の結論
となり、三段論法として形式的に展開することで、新たな結論を得ることができる
(この「新たな結論」は見かけ上新しく見えるが、実際はすでに前提に含まれていた情報の論理的帰結)
前提と推論形式が正しければ、結論が論理的に破綻することはない。
ちなみに、この「論理的に正しいはずだ」という思い込みの隙に、詭弁は入り込む余地が生まれる。
(特に、複数の推論が連結される場合、人は個々の前提や推論形式の妥当性を十分に検証しないまま結論を受け入れてしまうことがある。)
また、演繹法は前提の設定に強く依存するため、前提の選び方や定義の操作によっては、形式的に正しく見えるが実質的に誤った結論(詭弁)が導かれることがある。
さて、まずは三段論法の基本から整理
三段論法の基本
ある前提から結論を導くために理詰め(演繹)の推論する際に用いられるのが三段論法。
二つの命題を大前提(第一段)、小前提(第二段)として用いて、二つの命題にある共通の概念(媒概念)を通して結論(第三段)を導く。
ここで前提、結論にて使用される概念を、
- S:結論で ” 主語 ” となる概念
- M:”結論で消える” 媒概念 ”
- P:結論で ” 述語 ” となる概念
とすれば、第三段の結論では、” S (主語) ならば P (述語) ” の結論を得ることが目的。
また、結論で消える媒概念は、二つの前提をつなげる役割をはたす。(要は2つの前提のつなぎ役の概念)
第一格(格については後述)を例にすれば
- 第一段(大前提)・・M -> P ( M(媒概念)ならば、P(述語)である。)
- 第二段(小前提)・・S -> M ( S(主語)ならば、M(媒概念)である。)
- 第三段(結論) ・・ S -> P ( ゆえに、S(主語)ならば、P(述語)である。)
具体的:
「全ての人間は哺乳類である(M -> P )」&「全ての男は人間である(S -> M )」
故に「全ての男は哺乳類である(S -> P )」
(媒概念は人間:”人間”が大前提と小前提をつなぐが、結論では消える)
2つの命題が媒概念を通して論理的に正しくつながっている(推論形式が妥当)、かつすべての前提が”真”であれば、結論は常に”真”。
さて、この三段論法には、
- 各段の言い換えから発生する ”三段論法の格”
- 前述の(肯定文or否定文)/(全称文or特称文)の組み合わせ違いによる”主張の型”
による組合せがある。以下にて
三段論法の格と主張の型
三段論法の格として、前提の各段(第一段&第二段)の組み合わせ違いにより、以下の計4格存在する。
注:第三段(結論)は、全て ”S->P” (S(主語)ならば P(述語)である)
(ちなみに、第一段が ”M(媒概念)とP(述語)” & 第二段が ”S(主語)とM(媒概念)” の組合せ)
この各段に、命題(主張)の型(全称文or特称文、肯定文or否定文)(前述)

が組み合わされる。
格と型の組合せ合計で256通り: 全256通り= 格4(三段論法の格が4通り)x型43(主張の型が各4通りで三段の組み合わせ))
この内、論法として正しく結論が導けるのは24通りのみ。
ただし、命題の主語(S)が常に実在するもの集合であることが前提(主語(S)が空の集合ではないことが前提)
その24通りの組み合わせは、
- 第一格:AAA (AAI) EAE (EAO) AII EIO : 常に真 x4通り + (存在前提要x2通り)
- 第二格:EAE (EAO) AEE (AEO) EIO AOO : 常に真 x4通り + (存在前提要x2通り)
- 第三格:(AAI) (EAO) IAI AII OAO EIO : 常に真 x4通り + (存在前提要x2通り)
- 第四格:(AAI) AEE (AEO) IAI (EAO) EIO : 常に真 x3通り + (存在前提要x3通り)
である。
この中で (存在前提要)と記載した合計9通りの組み合わせは、前提が全称命題(A・E)のみなのに、特称命題(I・O)を結論とする形式であり、論法として正しく結論を導いている事を示すには、「命題の主語(S)が指すクラスは空でない(存在前提:少なくとも一つの実在する要素を持つ)」ことを条件として記す必要がある。
存在前提「命題の主語(S)が指すクラスは空でない」要の例:
例えば、第三格 AAI型であれば、
すべてのSはMである(全称肯定)
すべてのSはPである(全称肯定)
∴ あるPはMである(特称肯定)
であるが、この時「すべての主語(S)」と言っても、主語(S)が”空集合”の場合(実在する要素がゼロ)、この推論は崩れる。
具体例:「すべてのユニコーンは白い+すべてのユニコーンは角がある∴ ある角のある生き物は白い」において、結論だけみれば、一見成立しているように見えるが、ユニコーンが実在しなければ推論形式として成立していない。
また、無条件に正しく結論が導けるのは15通り。この15通りは追加前提を必要としない基本形(無条件妥当)として扱われる。
補足:読み方
例えば 第一格の ”EIO” を例にすれば
- 第一段(大前提)が ”E” 型 :全てのMはPでない (全ての時間つぶしは、仕事ではない)
- 第二段(小前提)が ”I” 型 :あるSはMである (ある作業は、時間つぶしである)
- 第三段(結論)が ”O” 型 :あるSはPでない (ある作業は、仕事ではない)

で、EIOとみる(この論法の組合せは、(前提が正しければ)正しい結論)
(ネットでペン図、オイラー図等で検索すると覚え方ふくめ、詳細がイロイロと出てくるのでそちらを)
三段論法内の命題(主張)の規則
命題における概念:”包む”ということについて
一つの命題の概念にて「包まれている」「包まれていない」に考慮することが役に立つ。
つまり、
主張の型でいえば、

例えば
「ある犬は子犬ではない」(上図④)といった主張の場合、
「ある犬」は(どんな犬かは)限定されていない(=含まれない)が、「子犬ではない」は子犬ではない事は限定されている(=含まれる)
「あるトラは白色である」(上図②)という主張になった場合、
「あるトラ」は(どんなトラかは)限定されていない(=含まれない)、また「白色である」はトラ以外の白色であるモノが含まれるため限定できない(=含まれない)。
また、
「全ての犬は猫ではない」(上図③)という主張では、
「全ての犬」は全て限定できる(=含まれる)、「猫ではない」は猫ではない事が限定されている(=含まれる)
「全ての子犬は犬である」(上図①)という主張では、
「全ての子犬」は全ての子犬は限定されている(=含まれる)が、「犬である」は子犬以外の犬も含まれるため限定されない(=含まれない)。
さてさて、これらの命題のつくりを踏まえ、三段論法とした時には次の規則がある。
三段論法を組む時、命題内の概念を ”包む” 事の規則
媒概念を包まない虚偽:媒概念は二つの前提の少なくとも一方で、包まれていなければならない。
もし聞いていても、ん?その話の流れはおかしいだろうと気づきはするが、一応図でかけば、

-> 結論で限定できないのはこの図の通り。この種の詭弁を「媒概念を包まない虚偽」という。
この場合、小前提で「全ての人間は・・・」とすれば成立つ
聞いていてもすっきり頭に入る。図でかけば

となる。
不当に包む虚偽:前提で包まれていない概念を、結論で包んではいけない。
前提で包まれていない概念を、結論で包んではいけない。このパターンも詭弁
この種の詭弁を「不当に包む虚偽」という。

これも論理の誤りはともかくよく聞いていれば、たぶん何かおかしいと気づくかな。。
まとめ:”包む”ということ
要は、大前提、小前提の命題において、主語が”全ての~”、述語が”~でない”の概念は、”包まれている”(限定される)。この”包まれている/いない”概念は、三段論法内にて
- 媒概念は二つの前提の少なくとも一方で、包まれていなければならない。
- 二つの前提のどちらでも包まれていない概念は、結論で包んではいけない。
である事が、三段論法で正しい結論を導く規則のひとつ。

